ねんりんピック山口2018(山口県健康福祉祭)美術展 金賞作品紹介
2018年07月02日
【日本画の部】
○「夜(よ)桜(ざくら)」 木 村 克 久 (周南市)
「湖畔の夜桜を水墨画で描いてみました。」
講評
常連であり、かつても夜桜の力作を出品して受賞されたことがある。やはり最も得意なモチーフにまたチャレンジし、実に印象深い作品を完成させた。
墨の濃淡の階調、光の存在を象徴する余白、滲みとぼかし、全てがみごとに調和した水墨画の力作である。
○「花万朶(はなばんだ)」 福 田 眞理子 (山口市)
「傘のように短く剪定されたしだれ桜の枝々が伸びるのを六、七年待ちました。花万朶のごとく咲き誇るしだれ桜にゆく春を惜しむばかりです。」
講評
この作品は、かつての洋画部門での金賞受賞者の作であり、その作風もほぼ同様のものであったが、やはりその画面のインパクトの強さは抜群であり、素晴らしい。その描写力、画の完成度、象徴性などの上でも、また他部門の受賞者であったことを承知の上でも、金賞を再び出してもいい作品だと思う。
【洋画の部】
○「桜島(さくらじま)」 栗 林 和 弘(防府市)
「桜島との対話、多くの画家が桜島を描いている。自分なりに思いを込めて、対話してみる。」
講評
画面全体の色と形がうまく調和して、力強い風景となった。出品作品全体の中で、一番存在感があると思った。
○「魅(み)せられて」 田 中 昭 子(周南市)
「仲間の皆さんと楽しく出来る趣味活動に幸せを感じています。」
講評
バラをテーマにした構図は目新しくないが、絵具を自由に扱い画面をつくり上げてゆくテクニックが際立っていると感じた。
【彫刻の部】
○「光(ひかり)と風(かぜ)と音(おと)」 田 中 繁 滿(防府市)
「これからも健康に留意しながら頑張ります。」
講評
タイトルが示すように光と風と音が感じられる作品である。ステンレス板を螺旋状に折り曲げ、定間隔にカットされた単位が90度に結合され、リズミカルに立つ。緑の高原に立つと三本の柱が響き合いさわやかな光と風と音が伝わるであろう。
○「思(おも)い出(で)」 半 田 幸 男(岩国市)
「若い女の人が頬杖をつき、何かを思い出している感じを表現したいと思いました。」
講評
女性が思い出に浸る様子をうまく表現している。頭部の丁寧な描写に対し、腕の比率が合っていないのは残念だが、好感のもてる作品である。作品全体のバランスを整えると良いでしょう。
【工芸の部】
○「なまこ釉(ゆう)大鉢(おおはち)」 加 藤 邦 彦(下関市)
「ムラのないように釉薬を掛ける事に注意した。」
講評
土の固まりを円心力のロクロから引き上げたロクロさばきはプロ並である。全体の緑の釉調も奇麗に焼成され完成度の高い作品である。
○「夜(よる)の高速(こうそく)道路(どうろ)」 山 下 一二美(防府市)
「高速道路の光の流れを表現しました。絹工房に15年間通い、先生の技法を習得する事ができました。」
講評
布を折りたたんだ重層した暗闇の光の襞が目前に迫って来るエキセントリックな彩りの具現化が斬新的である。
【書の部】
○「佐佐木(ささき)信綱(のぶつな)のうた」 浅 見 ゆう子(周南市)
「かな文字の美しさと共に和歌にも関心をもてるようになりました。」
講評
すみずみまで行き届いた達者な作品。
○「王維(おうい)の詩(し)」 吉 井 德 行(美祢市)
「王維の書を書きたいと思っていましたが良きお手本をいただき一心に書きました。書を始めて十年と益々書の奥深さに感銘を覚えています。一日一筆をモットーに頑張ります。」
講評
堂々とした思い切りのよい作品。表装にも気くばりをしてほしい。
【写真の部】
○「鶚(みさご)の恋(こい)」 今 田 信 夫(萩市)
「三月には繁殖期に入り、初夏にはヒナが誕生します。待ち遠しいが又見れるかもしれませんので楽しみにしています。」
講評
ミサゴの生態を追求して来た作者の新しい境地といえる迫力ある写真で、観察力と粘り強さが一瞬の美をとらえ、すばらしい作品となっている。
○「老人(ろうじん)の顔(かお) 花(はな)の名(な)は(サルバドレンシス) 」阿美古 由 之 (宇部市)
「老人の顔を見る花を見るような写真です。トキワ公園でみました。花は縦7㎝、横6㎝ぐらいです。」
講評
植物の形態は、しばしば不思議な見え方をする。しかもなかなか力強い。珍しい花だがその中に強い生命力を感じさせる。