ねんりんピック山口 美術展ねんりんピック山口2019(山口県健康福祉祭)美術展 金賞作品紹介
2019年07月30日
【日本画の部】
○「輝(ひかる)」 村 前 純 子 (山口市)
「梅雨の晴れ間に雲間から光が白い花にかかり、パッとあたりを明るくしている様子が表現出来ればと思い筆を取りました。」
講評
作者は、すでに定評のある方で、自らの描く世界観をしっかりもっておられ、今回の受賞作も、独特な象徴性を見事に画面に昇華した作風となっている。欲を言えば、画面にモチーフをもつ凄みのようなものが、加わるともっと良くなると思う。
○「御衣(ぎょい)黄(こう)の咲(さ)く庭(にわ)」 福 田 眞理子 (山口市)
「我が家の庭に咲く御衣黄という名の桜です。薄黄緑色の花に日差しが降りそそぐと息を飲む程の美しさです。自然の力が無限ではないという事を教えてくれているようです。」
講評
桜を継続的に描かれている作者で、その描く花樹は、単なる温雅で美麗な形態ではなく、どこか意志をもった、樹々の情念のようなものを感じさせる鮮烈さももっている。この作者の、桜以外のモチーフを描いたものも見てみたい気がする。
【洋画の部】
○「清光(せいこう)えびの高原(こうげん)」 井 上 博 富(下関市)
「矢岳高原オートキャンプ場からの眺望に感動し取組みました。霧島連山を望む広がりと清すがしさに苦戦!」
講評
作者は風景画で何度か受賞されているベテラン。色調の整え方も見事で、報告事項細部もしっかりと描かれている。今後さらなる展開を期待したい。
○「花(はな)のある卓上(たくじょう)」 田 中 昭 子(周南市)
「いろいろなカタチで、絵を描く事を楽しみたいと思います。」
講評
半抽象的な作品。モチーフの形を残しながら大きな色面で構成し、うまくまとめている。どこかに強さも在るような画面づくりを、今後は期待する。
【彫刻の部】
○「面(めん)の舞(まい)」 田 中 繁 滿(防府市)
「平成最後の作品、発砲スチロールの原型でブロンズ鋳造、面の構成で制作した。創作する事に生きる喜びを感じる。」
講評
朽ちた古代の鏡が、炎の舞のように昇天していくようである。失われた文明が次の世代へ昇華していく様を表現しているような作品であり、荘厳でさえある。
○「ぶらんこ」 半 田 幸 男(岩国市)
「無心に遊んでいる子供を見ていると、心が自然になごみます。」
講評
お孫さんがぶらんこで遊んでいる姿であろうか、生々とした表情をしている。丹念に作られており、ぶらんこが前へ移動しようとする動態をよく捉えている。
【工芸の部】
○「春(はる)の宵(よい)」 藤 井 由佳子(山口市)
「春の宵の思いを形・絵付に込めてつくりました。」
講評
胴部をロクロで挽き上げてから土を足し、口縁部まで手捻 りでしっかり成形しており、作り手の土を立ち上げる造形力の高さがよくわかる。器表には、素地土の昏さとの対比を活かし、絵付けした満月と枝垂れ桜でのどかな春の夕べが表現されている。花弁はやや荒い筆致を残しているが、器胎の土味との相性を考慮して視覚効果を高めたものだろう。
○「夕映(ゆうば)え」 藤 井 滋 人(周南市)
「美しく沈む夕陽を感じて。」
講評
陶器の造形は、膨らみと絞りのバランスにその巧拙が現れ、とくに口と足(底部)のつくりのシャープさが表現上とても重要視される。本作は、以上の観点についての作り手の腐心がよく分かる。成形後の素地土の乾燥を上手にコントロールするなどして、更なる鋭敏なかたちをめざして欲しい。それにしても、胴部の窯変の微妙な階調がじつに美しい。
【書の部】
○「賀(が)のうた」 奥 迫 節 堂(防府市)
講評
線質の優れたかな作品でスケールの大らかさが見事である。
【写真の部】
○「若(わか)い力(ちから)」 三 吉 稔(防府市)
「昨年は各所で自然災害があり人的にも物的にも多大な損害を受け大変な年でしたが、今年は災害のないおだやかな年であってほしいと願っています。」
講評
何とも不思議な色調で、祭りの男たちの表情を描き出した所が目を引く。多少乱暴な仕上げに見えるが、その整ってないトーンがむしろこの画 面に力を与えている。
○「羽繕(はづくろ)い」 今 田 信 夫 (萩市)
「巣立ちして5日目、枯れ木に止まっている処に出会した。鶚も私に気付き、見つめ会っていたが、逃げようともせず、羽繕いを始めたので、その時撮影した一枚です。」
講評
超望遠レンズで巣立って間もないミサゴの若鳥の一瞬のしぐさをとらえた力強い写真。幼鳥ながらもすでに備わっている野生の力強さと初々しさが見事に表現されている。